苦しそうな顔の理由は？遺体の表情が示す意味や、死化粧について解説

基本的に、死の直前の苦しさは遺体の表情に影響しないと言われています。これは人が亡くなった直後、表情筋を含むすべての筋肉が弛緩するためです。直前に苦悶の表情であったとしても、亡くなった後はすぐに筋肉が緩み、元の表情に戻ります。
死に顔が苦しそうに見える理由は、下記の2つが考えられます。

死の直前が苦しそうだったため
人は亡くなる前、下顎を上下させて喘ぐような呼吸になったり、喉元からゴロゴロと喘鳴音を出すのが一般的です。この時、本人には脳内麻薬が分泌されているために苦痛を感じないのですが、家族など近くで見ている人には苦しそうに見えるものです。このような状態を見守っていたため、死後の顔も苦しそうに感じることがあります。

死後特有の顔の変化
死後直後は、顔の凹凸が少なくなって表情が無くなったように見えたり、重力により血液が地面側に移動して顔が蒼白くなります。この時の顔が苦しそうに捉えられる場合もあります。

死後の顔の変化は、大きく3段階あります。

①前述したように人間は死後、すぐに筋肉が緩みます。そのため、こわばっていたり苦しそうだった場合も一旦元の顔に戻ることが多いのです。また、下顎や瞼の筋肉が緩み、さらに皮膚が乾燥することで、目や口が開いてしまうこともあります。
②死後1〜2時間経つと、死後硬直が始まります。10〜12時間ほどかけて硬直は進んでいき、表情も固定されて硬くなります。顔色は血の気が引き、蒼白となります。
③硬直は死後20時間ほどがピークで、その後再び筋肉は弛緩します。表情筋が緩んで、口角も左右へ広がりやすくなるので、硬直の際に険しい表情のままであった場合でも、この時には筋肉が緩んで穏やかな顔となることが多いようです。

死化粧の目的は、遺体を生前の姿に近づけ、美しく整えて故人の尊厳を守ることです。また、闘病などによる苦しみの痕跡を少なくすることで安らかな姿にし、遺族の心を慰める目的も併せ持っています。

遺体の顔のケアは病院の看護師や葬儀業者によって行われることの多いのですが、遺族の意向や状況によっては、遺族自ら実施することもあります。ここでは遺族が行うことのできる、顔のケア方法についてご紹介します。

目や口を閉じさせる
筋肉の弛緩や皮膚の乾燥によって目や口が開いてしまった場合、閉じさせて表情を整えましょう。
目については目薬を挿した後、瞼を閉じて10秒ほど抑えます。それでも開いてしまう時は、二重のりを目元に塗って上下の瞼をくっつけます。口は、唇だけを閉じさせようとしてもうまくいかないものです。枕で遺体の頭を少し高くし、顎の下に丸めたタオルを入れると、しっかりと閉口させやすいです。

死化粧
死化粧を遺族が行うことも可能ですが、その際の注意点として遺体からの感染のリスクがあります。亡くなった人の身体には細菌やウイルスなどが潜んでいる事が多いので、化粧品や化粧道具は専用のものを使い捨てるようにし、必要に応じて手袋やマスクを使用しましょう。

汚れが気になる場合はクレンジングで綺麗にする。乾燥予防のため、なるべく早くオイル・乳液で保湿をする。
男性であればひげ剃りを行う。
ファンデーションを塗る。パウダータイプは乾燥しやすいため、クリームタイプやリキッドタイプを使用する。
チーク・リップを付けて、血色を良くする。
必要に応じて眉墨で眉を描いたり、マスカラやアイシャドウを塗る。

上記が基本的な手順です。遺体への死化粧は普段メイクをし慣れている人でも難しいものです。不安がある時は葬儀業者の方に相談しながら行うのが良いでしょう。

死んだ人間の体、特に顔を見ることへの恐怖というのは、多くの人が感じるものです。その理由は、亡くなった人の顔を見ることで死を身近に感じ、いずれ来る自分の死について意識させられるからだと言われています。たとえ故人と親しい仲だったとしても、死に顔に恐怖を感じてしまうのは自然なことなのです。

お通夜や葬儀などの場面で、ご遺族から遺体と対面してほしいと言われることもあるでしょう。死に顔を見ることで気持ちを整理し、きちんとお別れができるという面もありますが、恐怖を感じる場合は無理をする必要はありません。「お顔を見るのがつらいので」などと理由を説明して、対面を断るのもひとつの方法です。